学習会の記録 

 ■家族SST勉強会

<講師> 杉並SST交流会 代表 武岡孝氏
<内容>
 SST勉強会は5回シリーズの長丁場で、初めてのこともあり,各回終了後、チャレンジ課題もありで充実した勉強会でした。

スキル演習は
第1回「嬉しい気持ちを伝える」
第2回「頼み事をする」
第3回「傾聴する」
第4回「不愉快な気持ちを伝える」
第5回「問題解決技能」でした。

勉強会での実技の他に、チャレンジ課題として、実生活でスキルを実際に活用するよう求められそれぞれ大いに勉強になったと思います。
今回のSSTは、ステップ・バイ・ステップ方式を学び、出来る事からやっていく形で問題解決技能訓練を通じて解決法を導くものとのことでした。

各回の参加者の発言の一部を紹介します。
・今日はドキドキしながら、SSTに参加した。
・密着し過ぎない程度の間合いの持ち方を学びたい。
・ともすれば感情的になりがちな対応を直していきたい。
・自分の欠けている点が、これまでの講習で理解できた。顔にでてしまう、命令調になってしまいがちであったこれまでを少し変えていきたい。
・本人が心がけていること以上のことを親が要求しがちであった。本人の力を基準に考え本人の力が出やすいようにしたい。
・家族に対しては面倒がったり、言葉足らずのことがありうまく言葉に出すこと難しい。
・こちらが遠慮してしまうことが多い。言い方を工夫して言うべきことを言っていきたい。
・相手の気持ちをくみ取ること、うまく伝えること、提案することを学んだ。

家族SST勉強会を終えて
10/3の講義は問題解決技能訓練でした。
問題解決のステップ・バイ・ステップ方式は、解決策の短所と長所を表にすることで整理・計画・実行迄を確認できる、ストレス軽減の妙技と思います。全てのSSTスキルは誰にも役立つ有意義なもの。武岡孝先生には遠い所から何度も来て頂き、感激しています。 受講生KN

 ■対処の学習会「べてる式当事者研究」■

<講師> ひだクリニックの向谷地宣明氏、松田さん、木村さん
<内容>
 浦河べてる:16棟の共同住居で約150人が暮らしている。日高昆布を全国に売るという商売を始めたら、地元の商店主たちが手伝ってくれた。今では理事、評議員として運営を助けている。過疎の地なので、グループ・ホーム等は安く所有できる利点がある。

松田さんのべてるの感想:SSTと当事者研究に参加、躍動感、積極性があって良かった。ひだクリニックのメンバーともこのようにやりたい。
木村さんの感想:海の香りの町の共同住宅で1週間暮らした。病気のことを当事者同士でごく自然に話すことができ、統合失調症が当たり前の世界で、ここでは生きづらさを感じることもなく、自分もそうだという一体感を持てた。

ひだクリニック:2005年開院、南流山にて、就労支援事業、運動療法、音楽療法等を行っている。クリニック中心に30人が個々にアパートで暮らし、ゆるやかに連帯している。ひだクリニックのスタッフの訪問が月に1回ある。

当事者研究とSST:基本は「練習しよう」→「研究しよう」→「一緒に考えよう」という方向。
(例)100円貸してと言われた。
貸してしまう→返せと言えない。→断ると人に嫌われるという思考。⇒迷う・悩む
「それって、お客さんだよね」と自分から切り離して考える。=外在化する。

カテゴリー誤作動:木村さんの場合
男性ならいいが、女性だと私は攻撃されると思ってしまう。→自動思考がマイナスに働く。

しおれ君とみちる君:松田さんの場合
しおれ君はひきこもりに近い状態。みちる君は元気が充満している状態。自分はどういう時にしおれ君になるか?「なつひさお」のとき、しおれになる。
(な・悩む、つ・疲れ、ひ・暇、さ・淋しい、お・お金、お薬、お腹、)それを、自覚しておく必要がある。
「心のサプリメント」を持ち歩く方法がある。(例)お祓いグッズ・お守り等の携行。
「自分を助けるプログラム」を持つとよい。
(例)精神的な自分の助け方を研究する。
回復の主役は当事者である。→オーダーメイドのアプローチでどんな物でも良いからお祓いグッズを持つのも良いと思う。


家族の立ち位置:本人と対面しない。(人と問題を切り離す)→本人そのものを問題視しない姿勢が大切。
アプローチしていく主体はあくまでも本人。(自分で自分を助ける。)→周りが本人以上に頑張っても意味がない。
(例)ひきこもりもストレスから遠ざかる1つの方法かも知れない。(ひきこもりや爆発も自分を助ける1つの手段と考える。)
浦河のメンバーの薬の量は、全国と比べて1/3程度と少ないのは、自分で自分を助ける方法を熟知している状態といえるのではないか。
薬以外のメニューがいくつあるか?複数揃えたい。
いろんなメニューを揃えるのはエネルギーがいることであり、生活の視点からメニューを見ていく考え方が必要です。
(質疑応答)
○自分を助ける「虎の巻」発見までの経緯は?
自分の感覚に合う本を、文章を読んでみて探した。15歳のとき、不可解なところが気に入って持っていた。一旦やめたが、その後またその本に行き着いた。これを持っていると自分で居られる。
○自分の病気を客観的に見ておられて感心した。初めから病気を冷静に受け入れることが出来たのか?
寝ずに勉強した結果、コントロールが効かなくなった。症状が安定せず、ジタバタした時期があって、心理教育を何度か受け、薬の勉強もし、4・5年の時が過ぎてやっと受け入れられた。
○マイナス思考がふくらんで、もうダメという状況になってしまう娘がいる。マイナス思考にどう対処したらよいか?
私は認知行動療法を受け、当事者研究を続けた結果、やっと今どうにか出来るようになった。自動思考がマイナス思考になりやすいことを理解して、繰り返し「お客さん」の存在を意識する方法を身につけた。そういう時、親は「あ、そう感じているんだね」と本人の気持ちに寄りそう言葉で、「それお客さんだよ」という外在化するやりとりを始められると良い。
「お客さん」は誰にもある。親にもある。行動は同じでも、受け取る人によって認知の内容は異なるもの。元から検証不可能なものに耐えながら人は生活している。それに対応する術は各自が身につけるべきもの。「弱さ」は誰にでもあるので、それを親も発信してみるという考え方もある。
○SSTは親同士でもやりたい、初めの頃に戻って勉強できた感じがする。
○「自動思考」「お客さん」を学んだが、他に適切な言葉はないか?
「誤作動」・「しおれ君とみつる君」・「なつひさお」「つらい・苦しい・死にたい」・「しがらみを捨てる」等々があると思う。
本人が、その人の現実をうまく表現しないとドクターも家族も判らない、本人が「うまい言い方」を身につけるとよい。
○ドクターは「薬」を出すだけ、心理教育はどこで受けられるか?
デイケアへ通うとよい。どんなデイケアなのか?プログラムを調べるとよい。

■統合失調症をはじめとする抗精神病薬の基礎知識■

<講師> 牛久南薬局 管理薬剤師 吉田雅光氏
<内容>
 統合失調症は、脳の神経伝達物質の異常が原因とされている。
生まれながらの素因と社会的な要因の相互作用により神経伝達物質のバランス異常をきたし発症する。
約100人に1人の割合で発症(人種や性別によってこの割合が変わることはない。)
16歳から40歳と比較的若い世代での発症が多い。
陽性症状:幻聴・幻覚・思考伝播・妄想等。
陰性症状:感情の平板化・意欲の低下等。

症状の経過:不眠・イライラ感→不安・興奮。
症状と社会生活:認知障害・不安抑鬱症状。
対処方法:薬物療法+心理社会的治療。

薬は何故必要か?:薬は活発になり過ぎた脳の働きを休める役割を担っている。
薬の継続で、症状の再発を予防している。
「指示どおりの服用」が大切:薬を中止すると1・2年の内に80%以上が再発すると言われている。
薬を服用せず再発した時は、症状が悪化し薬の調節が難しくなる。
「副作用」が起こったら、自分の判断で服用を中止せず、医師・薬剤師・看護師に相談する。

抗精神病薬は中脳辺縁系神経路と中脳皮質神経路の神経伝達物質であるドパミン・セロトニンの量を調整する作用をもっている。
抗精神病薬は、常用量では催眠・麻酔作用を有さず、身体依存も精神依存も示さない薬だから、安心して服用して欲しい。

抗精神病薬の分類と種類:第1世代(定型)の薬と第2世代(非定型)の薬。
定型薬:陽性症状を改善する。錐体外路系副作用出やすい。
非定型薬:(陽性症状+陰性症状)に効果。
錐体外路系副作用少ないが1部の薬剤では、体重増加・血糖値上昇に注意が必要。

抗精神病薬の特性による薬剤選択:薬剤は、第Ⅰ群から第Ⅳ群に分類される。(第Ⅰ群~第Ⅲ群は第1世代の薬、第Ⅳ群が第2世代の薬)
現在では、副作用の低減や陰性症状に対する効果が期待できる第2世代(第Ⅳ群)の薬が第一選択薬として位置づけられている。
第1世代の薬もその特性に合わせて、以下のような症状に使用されている。
精神運動興奮が強い場合:催眠作用が強いⅠ群の薬。
幻覚・妄想が強い場合:異常体験抑止作用が強いⅡ群の薬。
再発防止の場合:Ⅱ群薬の作用を持ちながら催眠作用の弱いⅢ群の薬。
抗精神病薬と併用される薬剤:副作用に対して併用される薬;抗パーキンソン病薬・下剤。
統合失調症の随伴症状に対して併用される薬;抗不安薬・睡眠薬・抗うつ薬。

新しい薬への切り替え:少なくとも4週間、3カ月以上要することもある。前の薬の離脱症状や新しい薬で起こる副作用に注意しながら進める必要がある。
薬の剤型(液剤・錠剤・注射液)や回数については、医師・薬剤師・看護師に相談する。

薬と嗜好品との関係:酒は基本的に禁止。
タバコは薬が効きにくくなることがある。
コーヒーはカフェインの覚醒作用と糖分摂取が問題。コーラも糖分が多く含まれ飲みすぎに注意が必要です。
多くの人が回復しています。
家族は
・病気についての正しい知識を持ちましょう。
・ご本人の感覚を理解しましょう。
・地域の人と情報を交換しましょう。
・毎日の服薬や治療の手助けをしましょう。
・焦らずにゆっくりと見守りましょう。

ジェネリック医薬品について:抗精神病薬の場合、第1世代(定型)の薬にのみジェネリック薬が有るが値段の差が小さく、精神科の医師はジェネリックへの変更を好まない場合が多く、あまり採用されていないのが実情。

質疑応答
○薬の服用について
気分が悪くなり、飲まなくなって通院もやめている人が多い。不調の様子をしっかり伝えて、医療側に対応してもらうことが肝要。薬の継続服用は、症状が安定していても、再発防止のために必要です。
○コーヒーについて
砂糖を入れないでミルクだけにすると良い。
血糖の検査は病院でしてくれる。
○本人が薬を飲めない場合、注射(デポ剤)があるが、これは、効果が長く続き、通院の回数、注射の頻度を減らす利点がある。医師に相談してください。
○服用時間に寝ている場合、服用の時間は多少ずれてもよいから、寝かせておいた方がよいと思う。
○薬切り替えの場合、単剤の時と複剤の時とでどちらが変えやすいか?
複数の剤のうち1種を替えたり減らしても、あまり変わらないと思うが、医師と相談してください。


■統合失調症の減薬ガイドラインについて■

 <講師> 茨城県立こころの医療センター病院長 土井永史氏
<場所> 県西生涯学習センター
<内容> 
◆統合失調症の減薬ガイドラインはどうして発表されたか
 1.日本は多剤大量処方が目立つ。単剤化は10%程度の状況。
 2.減薬の方法としてスカップ法(SCAP)がある。
 1つずつ、ごく少量ずつ減量するが患者の様子で休んでも戻してもいい。
 3.厚労省は統合失調症患者の薬の認容性テストを55施設163名にテストしたが、
 これではデーターが足りない。スカップ法は参考になるが、減薬のガイドライン
 は余り必要と思わない。

【統合失調症の昨日・今日・明日の概略】
 1.先人はいかに道を切り開いてきたか
 ~アメリカ精神医学の歩んだ道
 1793年 大いなる希望を抱いた→深い失望のサイクルが40~70年続く
 J.B.ピュッサンの主張を聞いてフランスのピネル(1745~1826近代精神医学の
 父)がモラル療法を作った。
 ①モラル療法1840年~
 人間的扱いと温かいまなざしでかなり改善できたが、患者の病棟隔離で人間
 倉庫となる。
 ②精神衛生運動1920~
 早期の治療的介入を行ったが精神病院は蛇の穴状態(閉鎖的)
 1938年ECT(電気痙攣療法)開発
 ③地域精神衛生運動1960年~
 閉鎖的病院からの解放:脱入院化運動
 ・3分の1が治療なき保護施設へ(牢獄)
 ・3分の2は治療も保護もない路上生活へ(ホームレス)
 ・精神病院は暴力的な患者のみはいれる。
 2.この歴史から何を学ぶか
 ①統合失調症は病気であることを発見
 ➁患者の一部は保護とモラルの働きかけのみで回復する。
 ③適切な薬物治療で効果が得られる。
 ☆3種の神器~モラル・電気療法・薬物療法

【統合失調症の今日】
 1.日本の場合
 人口1億2千万人→統合失調症120万人
 (1)急性期医療には地域連携医療が必要。
 (2)医療と直結した慢性重症患者受け入れ
 施設が必要→15万人規模の病床

【統合失調症の明日に向かって】
 1.こころの医療センター(平成23年4月県立友部病院から名称を変更)
 ① 地域に開かれた中核病院
 ② 専門家を育てる専門病院
 ③ 全国に発信する先進病院として福祉連携サービスを行っている。
 その結果、夜間外来が8.8倍に入院が8.1倍に増えた。
 2.慢性重症患者から発見したこと
 ~患者を救うためには重症化そのものを抑える新たなシステムが必要
 入院1年以上の患者で40名が重症化したが、無呼吸症候群と深い関係がある。
 5大成人病の内、癌を除く疾患にすべて無呼吸症候群が関わっている。
 平成26年6月に睡眠医療センターを開設。
 3.薬物療法の効果と限界
 ・ミトコンドリア減少と全身症状を研究している。
 ミトコンドリア機能障害にビタミンB6を投与すると改善が見られた。
 ビタミンB6のピートキサールの効き目を研究中。
 ・ゼプリオンは、6か月で27名が死亡した。
 薬そのものは悪くないようだが、私は使わない。
 旧薬の中でもコントミンは良いと思っている。 とお話がありました。

 ■統合失調症の減薬について■

<講師> 水海道厚生病院 河合院長
<内容>
◆なぜ、今、『減薬なのか』
 ・厚生労働省が今年4月に減薬のガイドラインを発表した。
 多剤大量処方がなかなか減らない為、診療報酬を引き下げる通達が出た。
 ・厚労省の保健局医療課が発表した診療報酬改定の概要の中で、適切な向精神薬の
 使用の推進として多剤大量処方の規定が書かれている。
 →1回の処方において3種類以上の抗不安薬及び睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬
 又は抗精神病薬を投与した場合を言う。
 ・なぜ日本で「多剤・大量処方」が行われたのか(国際的にもおかしいとの見解)
 ①多剤併用の漢方医学が影響していると思われる。
 ➁日本は国民皆保険制度のため薬を多く処方しやすい。

◆問題点を解決するために
 ・統合失調症の病気と特徴を学ぶ(内容省略)
 ・治療の歴史を学ぶ
 1950年過ぎに薬物療法が開発された→陰性症状を抑えるため大量処方の時代
 2000年位からシンプルな処方の推奨
 ・非定型薬(錐体外路症状を軽減した薬)の開発と治療

◆適切に用いれば種々の利点
 ・錐体外路症状が少ない
 ・抗パーキンソン薬を減らせる
 ・抗コリン性副作用(便秘など)が少ない
 ・陰性症状、認知機能を悪化させない
 飲みやすい→治療維持しやすい→再発を防ぎやすい
 -大量に使っては意義が少ない
 -大量の従来型と併用しても意義が少ない
 -すでに何度も再発し、慢性化・難治化している場合
 ①新薬の一般的な使用料では症状を抑えきれないことが多い
 (通常用量の2倍程度は必要なことがある)
 ②新薬のも1種類では足りず2種類程度まで併用が必要な場合があるだろう。
 ③新しい抗精神病薬よりも、旧型の薬の方が良い場合があるかもしれない。

◆減薬のメリット・デメリット
 <メリット>
 ・種々の副作用が軽減する
 ・精神症状が改善するかも知れない
 ・治療を維持しやすい→再発を防ぎやすい
 <デメリット>
 ・薬を変えれば、別の副作用が出現することもある
 ・精神症状が悪化するかも知れない→元に戻らない恐れ

 『大量処方かどうかの目安』
 抗精神病薬をCP(クロルプロマジン)換算で1日、1,200mgまでは許容量と
 思われるが、多い人で3000mg~6000mgという人もいる。
 3000mgを超える量は止めなければならない。
 『減量は難しい』
 ~離脱症状が起こりやすい。
 ・抗コリン性離脱症状嘔気、嘔吐、下痢など胃腸症状、不眠、発汗、頭痛、
 めまい、不安、焦燥など
 ・超過敏性精神病
 ・離脱性錐体外路症状
 反発性アカシジア、反発性パーキンソニズム、離脱性ジスキネジア

◆まとめ
 すべての患者さんにとって、“単剤化”や教科書的な“通常用量”がベストとは
 限らない。